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  3. デザイナーバー「FLAT」のマスターに聞く、デザイナーのリアルとこれから

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浅草にあるデザイナーが集まるバー「FLAT」でマスターとしてお店に立つツモマー氏。
お客さんと交流する中では、デザイナーとしてのリアルな不安や悩みが聞こえてくることも。

フリーランス・業務委託・インハウスと自身もさまざまなキャリアを経験してきた彼が、バーの運営を通して感じたデザイナーの悩みや、今後のデザイナー像について思うことを伺いました。

ツモマー
フリーランスを経て、現在はインハウスデザイナーとフリーのアートディレクター・プランナーを両立。デザイナーのためのコミュニティーバー「FLAT」でマスター兼プランナー担当としてお店に立っている。

FLATの運営から見えた、若手デザイナーの悩みと課題

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ーツモマーさんといえば「FLATの人」といったイメージが強いのですが、まずはそこから少し伺ってもいいでしょうか?

ツモマー: もちろんです。

ーFLATはデザイナーにとってどんな場所にしたいと思ってはじめたのですか?

ツモマー: 実は僕、バーテンダーをやっていたときにデザインの師匠と知り合って、デザイナーとしてのキャリアがスタートしたんです。そこからデザイナーとして成長する過程で、たくさんの人との交流があって、色んな人にお世話になりました。

でも、僕みたいにガッツリ師匠につくって簡単なことでないと思うので、「インスタント的にでもデザイナー同士がつながれる場所があるといいな」と思ってFLATを作りました。

僕もそうだったように、デザイナーになれる可能性は誰にでもあると思うんです。だからチャレンジしたい人の力になれる場所というか、なにか役に立つ場所になれればいいなと思っています。

ーなるほど!今の話を聞くとなんとなく若いデザイナーさんが集まっていそうなイメージなのですが、実際はどうなんでしょうか?

ツモマー: たしかに、デザイナー歴が5年以上の人はあまり来ないかも。あとは、個人でプロジェクトを回しているような人が来ることもありますね。ジャンルとしては、グラフィック、UI、WEBが多いかな。

ーデザイナーならではのお悩みが話題にのぼることも多いのかなと思うのですが、お客さんとはそういう話もするのでしょうか?

ツモマー: 基本的にはスタッフ側の僕ら直接アドバイスっていうのはあまりしないのですが、話を聞いていると、やっぱりお金やキャリアで悩んでいる人は多いですね。

ーお金…ですか?ちょっと意外です。もっと感性的な話が多いのかと思っていました。

ツモマー: もちろん、イケてるイケてないといった話は出てきますよ。

それでもみんな、お金の話はしますね。それは、同じデザイナーでも環境によって待遇がかなり違うことが原因かもしれません。

たとえば、キャリアステップを考えてみても、スタートアップとベンチャーでは全く違いますよね。
同じ給与からスタートしても、スタートアップなら半年でクリエイティブディレクターにたどり着くのに、大手だと数年もかかってやっとだという話も聞きます。

そうなると、大手で働く場合「自分はあと何年働けば目標年収にたどり着けるのだろう…」と悩む人もいます。まあ、ベンチャーは大手に比べればリスクも多いので、一概にどちらが良いとはいえませんが。

あと、最近FLATのお客さんで多いのが、他職種から転職した未経験デザイナーの方。もとの仕事ではそこそこ稼いでいたけど、未経験デザイナーになったことで年収がガクッと下がったりすることもよくあるので、「どのくらい働いたら前職くらいの年収に戻れるのか」と不安を抱えている人は結構多いです。

ーなるほど。みなさん悩んでいるんですね…。
ツモマーさんご自身の経験から、これからステップアップしていきたい人にアドバイスなどありますか?

ツモマー: 純粋にデザイナーとしてのスキルアップを目指すなら、受託案件・クライアントワークをやっている会社に行くべきですね。

もちろん会社にもよるのですが、あるときはコーポレートデザイン、またあるときはプロジェクトのロゴ作りなど、とにかくいろいろな仕事や企業に触れられるのがクライアントワークの強みだと思うんです。
撮影同行やコンペでのプレゼン、さらに代理店と一緒に動いたりとなると、技術を上げるためにすべきことや、その仕事に関わるいろいろな職種の人たちがそれぞれ何を考えているのかも見えてくるんです。

正直、仕事的にはハードだとは思いますが、やっぱり自分の限界を知ったり限界点を上げていくためには、多少の無茶が必要かなと。

逆にチームで仕事を進める方法や、マネジメント力・ビジネス的な考え方を身に付けたいなら絶対インハウスがいいと思います。

デザイナーの働きやすさを大きく左右するのは、周囲とのコミュニケーション

ー働きにくさで悩んでいる方も多いと聞きましたが?

ツモマー: ここはやっぱりデザイナーと周囲の人同士のコミュニケーションが大きく影響するかなと。
デザイナーの生態やスキルを把握できていないクライアントに、無茶な注文をしたり無理なスケジュールを立てられて悩んでいる人は多いと思います。

正直、僕としてはデザイナー自身が「これは無茶です」とかはっきり言ったほうがいいと思うんですけど、そこまで行動する人は少ない印象ですね。

デザイナー自身が自分の働きやすさまで考えられず、作ることでいっぱいいっぱいになってしまっている気がします。

https://s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/ddraft/blog/5ac9c5d7-27de-49b7-96af-b6c53b078c28.pngツモマーさんが過去に作成したwebサイトのデザイン

ーたしかに。デザイナーさんの中には「これは無茶です」をはっきり言えない人も多いと思うのですが、ツモマーさんは最初からそれを言えたタイプでしたか?それともなにかきっかけが…?

ツモマー: はっきり言えるようになったのは、フリーランスになったころからでした。仕事を掛け持ちするようになってくると、それぞれの案件に使える時間がある程度決まってくるんですよね。
でも、途中で追加が出てきて作業が膨れ上がるのはよくあります。そういうときは、一旦作業をストップして追加作業の見積もりを出し直してOK出るまで動かないって決めました。

最初は勇気がいりましたけど、今は最初に契約書で「仕様変更の場合は見積もりを再検討してプロジェクトを止めます」と明記しています。そうじゃないといいものもできないし。

「イケてる人」との仕事から生まれるストイックさとユーモア

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ー紆余曲折を経て、ご自身の働きやすさを確保していったんですね。ちなみに、フリーランスからインハウスに転向したのはどうしてなんでしょう?

ツモマー: フリーランスで働いていたときも、業務委託として会社に行きながら個人の仕事もしていて、そのスタイルには満足していました。
でもそんなときに、遊びに行った知人の転職先が、めちゃくちゃイケてるデザイナーチームがだったんです。それがきっかけですね。

ー「イケてる」って、どういう判断でそう思ったんでしょうか?

ツモマー: 一人ひとりの能力はもちろん、良いアウトプットをするための体制づくりとがとにかくイケてたんですよね。

Sketchのファイルを見せてもらったのですが、当時使われはじめたばかりのAbstractを導入するなど、新しい技術も積極的に使ってたり。

あと、Sketchを使っていると、それぞれのファイルってどうしても属人的になりがちなんですが、その会社では「マテリアル」「コンポーネント」「プランニング」というファイルがそれぞれあって、「こんなにきれいに可視化してある会社があるのか」と感動したんです。

しかも、UI、UX、コミュニケーションなどそれぞれの分野でプロフェッショナルなスキルを持ったデザイナーが集まっていて。

UIデザインのロジカルさと知識量がすごくて、ポートフォリオ見せたときに「こういうときはこうなんだけど、次の画面はどういう想定?」って指摘が的確だし、「それだったらこうだよね!」とその場でサクッと手を動かしはじめたり。

当時の僕は「UI/UXって言っても、要はユーザービリティでしょ?」と思っていたんですけど、この人たちと話して、UI/UXが理解できたというか。

とにかくすごくレベルの高いデザインチームで、正直「どのジャンルでも今の自分じゃ勝てないな」と。
そんなイケてる人たちが、僕を仲間に選んでくれたんです。

ーそれはテンション上がりますね!

ツモマー: そうなんですよ!絶対に勉強になるなと思いましたし、この組織にどんな未来があるのか見てみたいと純粋に思ったんです。それで、「コレは行くしか!」と思って、今に至ります。
入社前にFLATや副業もOKもらったので、おかげさまで自由にやらせてもらってますし。

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ーいろいろな働き方を経験した上で、デザイナーとして大切にしていることはありますか?

ツモマー: 当たり前のことだけど、制約・納期・時間は大切にしています。

あとは、僕の仕事のテーマである「愛と情熱とユーモア」。
「この人と仕事したい」って想いが強いほうがストイックになれます。ストイックっていうのは徹夜するとかじゃなくて、愛と情熱をもってアウトプットできるかということ。
「本当にこの方向で合っているのか」を検証していくからベストアンサーが出しやすくなるし、結果それがユーモアにつながるのかなと思います。

https://s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/ddraft/blog/13de3d45-b9b9-44b7-be44-e611ddc7e1d2.pngチームの立ち上げからロゴ周りのコンセプト作成まで担当したエッセイチーム「shigusa」

ツモマー: そうやって検証したり、意見をすり合わせたりしながら、相手のニーズを引き出せるのがデザイナーのあるべき姿な気がするし、相手が迷っていたらいろいろ調べて提案できたらベストですよね。

そうやって自分を高めていって、「願わくばあの4人(社内のデザインチーム)のだれかのポジションを…」って考えてはいるのですが、なかなか難しいですね。みんな永遠に勉強してるんですよ。いつまで経っても勝てなくなっちゃうから、もうしなくていいのにって(笑)

ーデキるデザイナーさんはやっぱり日々インプットをしているんですね。

ツモマー: 僕の周りはそういう人が多いですね。
やっぱり成長のためには勉強は必要だなって僕自身も思います。

過渡期のデザイナー業界は、情報発信とキャッチアップ力で生き抜く

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ー今後、デザイナー業界はどういう方向に進むと思いますか?

ツモマー: 去年くらいからデザイナー向けの大型イベントが急に増えてきたんですよね。

少し前から海外の考え方やアプローチが日本に入ってきたのと、SketchやXDなどのデザインツールも出てきて、「Cocoda!」や「Daily UI」を使って誰でも気軽にデザインにチャレンジして公開できる、デザイナーになりやすい文化ができつつあるからだと思います。

面白いのが、今まで「デザインなんか」って言っていた人が、手のひらを返して「デザインの世界はすごくいいよ!」と言いはじめたんですよ。
社会が「デザインの世界はお金が稼げそうだな」とシフトしてきたのかなって、イベントが増えだしたあたりから思っていました(笑)

そんなこんなで、企業もそれに目をつけてUI/UXを取りれようと人材募集をかけはじめた。需要が増えれば人材の取り合いになり自然と給料も上がるので、デザイナー界隈でも「UIデザイナーは給与が高いらしい」という感じで目指す人が増えて、一種のバブル状態になっているのかなと思います。

ーバブル…ということは…?

ツモマー: もうすぐUIデザイナーのバブルが弾けて、お給料がガクッと下がるんじゃないかなという懸念は持っています。あくまで僕の見解ですが、海外のレベルに追いついているデザイナーはまだまだ一握りで、そろそろ経営者たちがそれに気づくんじゃないかなって。

たとえば、ボタンの色を変えるときに、依頼者から「どうしてボタンの色を変えるだけで4時間もかかるの?」と言われたとします。デザイナー本人は理由を理解できているかもしれませんが、依頼した人は作業の重さやそもそもの変更理由をわかっているわけではないので、納得の行く説明が聞けないと「本当にこの人にお願いして良いのか」という不安が増えてしまいますよね。
それを払拭するには、UIの感性工学や認知工学を噛み砕いて説明できるようになる必要があるなと。

さっきのボタンの色変更を例にすると、

「前にある物理削除の画面のあとにアクションシートなどの画面が来ると、ユーザーは『今までの行動が水の泡になる』と感じ、押すのをためらってしまうかも。だから、表示させる注意書きに合わせてボタンはこの色にしましょう。」

などと具体的に説明できれば、お金を払っている側も納得してデザイナーに任せられると思うし、企業とデザイナーのギャップを埋めることが出来ると思うんです。

ーたしかにそれなら納得できますね。
そんな風にデザイナーと周囲の人たちのギャップを埋めることが、デザイナーの転職市場の課題解決にもつながっていくのかなと思うのですが、どうすればよりデザイナーにとって働きやすい環境になるんでしょう…?

ツモマー: デザイナーと企業、それぞれが情報発信して、それをお互いがキャッチし合う。
企業側もUIとWEBの違いとかそういうのを理解することが大事だと思いますが、同時にデザイナー側も企業をしっかり見るべきですね。

「この企業じゃないと転職したくない」っていうデザイナーもいるのですが、話を聞くと実は他の企業のほうが合っていることもよくあるんです。だから、可能性を広げるためにも色んな情報をキャッチすべきだなと。

発信の方で言うと、志望企業の人が普段どんなプラットフォームを見ているのかを知って、そこに作品をおいておけば、自然と気づいてもらうチャンスは増えていきます。
というか、せっかくWEBやSNSがあるんだから、コミュニケーションの種まきを積極的にして、一歩踏み込んでお互いを知っていくのってすごく大事ですよね。

そうやって自ら動いていくことで、周りの理解を得ながら働きやすい環境を整えていけたら、もっと優しい世界になるし、デザイナーとしても楽になると思うんです。

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