去る2017年11月28日(火)に、パシフィコ横浜にて、Adobe MAX Japan 2017が開催されました。
Adobe MAXとは、グラフィックデザイン、写真、Web製作、映像製作に携わるクリエイターの方、およびそれらを目指す方を対象にした、Adobeが提供している Adobe Creative Cloud(※以下、CC)を中心に新製品や新機能、その他サービスなどに関するセッションなどを行う、日本最大級のクリエイターの祭典です。
今年は、デザイナードラフト運営事務局で参加してきたので、その様子をレポートします。
レポート第1弾は、下記タイムテーブルの11/28(火)午前中に行われたKEYNOTEセッションと、Adobe MAXの会場レポートです。
※ タイムテーブルはAdobe MAX Japan 2017公式サイトより引用
KEYNOTE
午前中は、Adobe社のデジタルメディア事業部門担当エグゼクティブバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーブライアン・ラムキン氏のKEYNOTEから始まりました。
ADOBE VISION
ブライアン・ラムキン氏
Adobeは、プロでも初心者でもCCライブラリを有用に満足して利用してもらうために、様々なコンテンツ配信、コミュニティ支援を行っています。具体的には、Adobeのソフトウェアを利用しているプロのクリエイターを支援するアドビのプログラムとして、Creative Cloud道場やAdobe Community Evangelistが提供されています。
Creative Cloud道場は、各分野第一線で活躍されている方が、現場の経験や知識を発信/共有するためにコンテンツ配信をするプラットフォームで、Adobe Community Evangelistは、それらを積極的に発信/共有するアドビ公認のエバンジェリストであるとの説明がありました。
INSPIRING TALK
落合陽一氏
メディアアーティストの落合陽一氏の基調講演。
近時の作品の紹介や、落合氏が考えるこれからのメディアのあり方、可能性についての講演でした。
氏は「今後どういう風にものを作るのか」「 どういったメディアを作っていけばよいのか?」を日々探求していて、これからのメディアは、「いかにしてフレームの外に作るか」「どうやってメディアを作っていくか」、がキーワードになると唱えていました。
メディアアーティストとしての作品紹介として、Media Ambition Tokyoで展示されたLevitropeや、茨城県北芸術祭で展示されたコロイドディスプレイなどの紹介もありました。
「デジタルが自然の一部として捉えられるようになる」「空間で直接物を見る事が当然になる」「スマートフォンの次にはグラスが来ると思っている」「人はイルカ化する」「人間知能と機械知能のものづくり」などのたくさんの次世代のメディアを想起させるキーワードもたくさん繰り出され、トークンエコノミーを事例に挙げ、今までは交換できなかった価値がデジタル化することで、交換可能な価値として存在するようになってきている現在のメディアの状況に関しても、落合氏ならではの視点・観点で講演が織り成され、クリエイターにとって非常に刺激的な内容となっていました。
最新CCアップデートのKEYNOTE
KEYNOTEの中では、CCの最新アップデートで追加された新機能、新製品のデモも行われました。
Illustrator
2017年で30週年となるIllustratorのアップデートから。
ベクターデータの変形がラクになる、パペットワープツール
パペットワープツールは、Illustrator内のアートワークにパペットワープツールでピンを設定すると、そのピンを基準にしてアートワークの変形をしてくれるツールです。
会場では、横向きの犬にピンを刺して、元のデータよりも首をかしげたポーズにしてみるデモが披露されました。
※デモの内容はこちらでも紹介されています。
Photoshop
Illustratorと同じく定番ツールのPhotoshop。
ペンツールが進化、曲線ペンツール
最新版で加わった曲線ペンツール機能についてのデモが行われました。
既存のペンツールへの機能追加です。ペンツールで曲線を再現するときは、ベジェ曲線とそのアンカーポイントやアンカーハンドルを個別に操作して曲線を再現する必要がありましたが、曲線ペンツールでは直接、アンカーポイントの間のラインの部分を操作して曲線を操作できるようになりました。
曲線ペンツールが追加になったことにより、更に直感的にペンツールを操作できるようになったのではないでしょうか。
Adobe XD
2017年10月のCCアップデートで、ついにAdobe XDが正式版としてリリースされました。β版としてリリースされてからおよそ1年。正式版発表を心待ちにしていた人も多いのではないでしょうか。
クリエイティブを加速する、CCライブラリ統合
CCライブラリとの統合により、Adobe XDを介して、PhotoshopやIllustratorなどのCC製品で作成された要素を修正、適用しできるようになりました。
エンジニアとの連携を推進する、デザインスペック
2017年11月のアップデートでも早速、エンジニアとの連携を推進するデザインスペックという機能(アートボード上の色、文字のプロパティなどの共有機能)が追加されました。
TypeKit
このTypeKitでの発表が一つの大きな山場でもあったのではないでしょうか。TypeKitでの新和文フォント、貂明朝の発表です。
源ノ角ゴシック(Source Han Sans)の制作メンバーとしても知られている@ryon106のデザインによる新しいアドビオリジナルの和文書体。書体には、「鳥獣戯画」の要素を取り入れ、「かわいくも妖(あや)しい」がコンセプトだそう。発表後、さっそくtwitterなどでも盛り上がりを見せていましたね。
Dimension
以前より、Project Felixとしてベータ版が公開されていたものの、正式版が登場しました。
Dimensionは、2Dと3Dデータの合成を実現するためのツールです。
会場のデモでは、バッグや缶の3Dアセットに、Photoshopで作成したデータを当て込んで3Dのシーンを再現していました。
Adobe Stockに既にいくつもの3Dアセットが用意されており、簡単にIllustrator、Photoshopのデータをはめ込んで3Dイメージで再現できます。
また、背景画像との合成と調整も、Dimensionが自動処理し、3Dシーンの再現までシームレスに行えます。
Behanceに世界中のユーザーが投稿したDimensionで作成した作品のギャラリーもあります。
Lightroom
デスクトップ版を経てLightroomがCCに登場。既存のLightroomはLightroom Classicとして継続されるとの発表がありました。
Premiere
近時のアップデートでは、概念としてWebにはよくあるレスポンシブの概念を取り入れたとのこと。
会場では、アニメーション全体の長さを変更しても、オブジェクトがアニメーションするのタイミングを保つことができるようになり、他のレイヤーでの変更作業が自動的にpremiereのプロジェクト自体に対応するようになりました。
Adobe Stock
Adobeでは定番、画像などのアセットサービスです。IllustratorやPhotoshopなどで利用するための写真やベクターデータはもちろん、Premiere用のテンプレートなどもあります。今回の発表では、XDやPhotoshopからのCC連携で頻繁に利用するシーンが提案されていました。
AfterEffects
VRやAR作成アプリケーションとしての進化はもちろん、データ駆動型アニメーションのアップデートがフィーチャーされていました。
JSON形式のデータ連携が可能になり、編集修正がより簡単に行えるようになりました。
Adobe Sensei
http://www.adobe.com/jp/sensei.html
2017年10月18日(水)から20日(金)にラスベガスで開催されていた、本土の「Adobe MAX」で発表になり大変話題になっていた、Adobe Senseiが国内でも発表されました。
当日の会場でも、本土で発表された下の動画とほぼ同じデモが行われました。(※デモは下記動画の10:00頃〜)
手書きのスケッチを認識して、素材をサジェストしてくれる
手で書かれたスケッチでも、そのスケッチに何が書かれているかを推測し、自分で用意した写真やAdobe Stock内の素材から利用できそうな素材を提案してくれます。
編集履歴も記録され、要素ごとの分岐を記憶し、その分岐となる要素を推測する
現在でも様々なアプリケーションにヒストリー機能はありますが、Adobe Senseiはそのデータの編集履歴を把握し、要素ごとに分岐を記憶してくれます。
その分岐に立ち戻って、内容を容易に変更することができる
また、モデルの写真を選択した分岐にまで立ち戻り、上画像のように、「女性のモデルを男性にする。」ことや、「斜め向きのモデルを正面向きのモデルに変更する。」などもAdobe Senseiを使うと容易にできるようになります。
出展ブースレポート
Adobeブース
Adobeのブースとして、オリジナルのフォトブロック、コースター、キーチェーンをその場で作ることができるCreative Cloud工房が設けられていました。
Adobeベンチ
CCライブラリのアプリケーションアイコンが印刷されたベンチもありました。かわいい。
MAXストア
2017年も、MAX STOREは大盛況。あっという間に殆どのグッズが売り切れになっていたようです。
書籍販売ブース
Born Digital, inc.さんと玄光社 さんの書籍販売ブース。
各社ブース
どちらのスポンサーのブースも終日盛況でした。
その他会場レポート
ランチブース
Adobe MAXではランチ付きのスポンサーセッションもありましたが、会場がみなとみらいのパシフィコ横浜なので、周りはコンビニやランチスポットが豊富です。
しかし、会場にはランチコーナーも設けられていました。ケバブやカレーなど色々なキッチンカーが勢揃い。
運営事務局メンバーはお昼に富士宮やきそば、おやつにバナナチョコ生クリームのクレープを食べました。美味しかったです!
FUGLEN COFFEE STAND
会場にはFUGLENさんのコーヒースタンドもあり、終日盛況のご様子でした。
充電スペース
会場内にブース出典もされていたcheeroさん提供で、バッテリーが会場内に幾つか用意されていました。なんとUSBのハブも用意されているという高ホスピタリティ。
つづき
次回は、Adobe MAX Japan 2017の全セッションの中から、デザイナードラフト運営事務局が参加した、
- Adobe XD 101:明日から完全に使いこなす基本操作から応用テクニックまで
- Adobe XDが変えたライゾマのWebディレクション舞台裏
- 伝言ゲームをなくしてデザインの質を高める!Adobe XDを使ったライブデザインのコツ
- 事例に学ぶAdobe XDフル活用の極意。Photoshop/Illustratorとの連携から仕様書作成まで
の4つのセッションレポートをお届けします。お楽しみに!